「おしっこがもれる」のはいやなものですね。周りのひとに匂うんじゃないかと気になったり、外出するのもおっくうになったり。尿失禁は男性より女性に多く、年齢を重ねるごとにその頻度は増加しますが、実は若者でも意外と多い病気です(10歳代女性でも9%、50歳代女性で48%)。尿失禁をおこす原因はいろいろあります。主なものは@腹圧性尿失禁(おなかに力をいれると尿がもれる)、A切迫性尿失禁(急におしっこに行きたくなってトイレまで間に合わない)、B溢流性尿失禁(尿が出にくいため、膀胱が充満して尿があふれ出す)の3つです。若いころの尿失禁は腹圧性が比較的多いのですが、高齢になると切迫性の割合が増えてきます。これらを見分けるためには、年齢や性別はもちろんのこと、くわしい問診(どんなときにもれるか、もれる前後に痛みや尿にいきたい感じはあるか)、今の病気や過去の病気(肥満、腹部の手術、糖尿病、脳梗塞、交通事故、前立腺肥大症など)、現在服用している薬(意外に膀胱機能に影響を与える薬は多い)などを知ることが参考になります。原因が異なれば治療が異なるのは当然のことです。
たとえば、切迫性の場合にはトイレではないところで膀胱が収縮するためにおこる失禁ですので、膀胱の力を緩める薬が有効ですが、溢流性の場合は膀胱から尿が出ないことが原因ですので、膀胱の力を強くする薬が必要です。つまり切迫性の時と溢流性の時はまったく反対の作用の薬を服用しなければなりません。これを間違うと病気はよくなるどころかひどくなります。またそれぞれが混合しているタイプもあります。しかし治療法としては3種類の尿失禁それぞれについて有効なものがあります。タイプを間違えなければ尿失禁治療薬の効果は、改善60%前後、やや改善以上85%前後あります。問題は受診率が非常に低いことです。こんなに悩む人が多い病気なのに、専門家である泌尿器科を受診する女性は1.4%(男性は8%)、まったく誰にも相談しない女性が89%(男性は80%)といわれています。はずかしいからとか、年のせいだからとあきらめてはいけません。つらい症状をがまんするより、ちゃんと診断治療を受け、より快適な人生を送りませんか。