血尿
春ですね。春は出会いの季節、であると同時に入学、進級、就職時には必ず健康診断があります。また多くの職場でも健康診断があるでしょう。健康診断で血尿(尿潜血)を指摘されることは結構多く、昨年の滋賀県での市民検診では二十歳代、三十歳代で4%弱、五十歳以降は17〜19%でした。さて、血尿や尿潜血を指摘されたら、その後の二次検診はどうされていますか。「疲れていたせいかなあ」なんて言い訳はだめですよ。だって同じように疲れているあなたの同級生や同僚は血尿ではないでしょう。
通常の健康診断では、血尿の有無を試験紙で判断します。(尿潜血)これは赤血球の持つ酸化作用により、試験紙の試薬が変色するのをみるものですが、血尿以外の原因でも酸化反応が起これば試験紙は陽性を示しますし、逆に血尿なのにうまく酸化反応が起こらないこともあります。尿潜血を指摘されたら、まず顕微鏡で尿中に赤血球があるかどうかを確認します。血尿の濃い日もあれば、薄い日もありますから、少なくとも三回は顕微鏡による尿検査が必要です。血尿をきたす原因を大きく分けると、腎炎や高血圧、糖尿病などから起こるもの(内科的血尿)と、結石やがんなどから起こるもの(泌尿器科的血尿)がありますが、尿を顕微鏡で詳しく観察すると、赤血球の変形や配列から、内科的血尿か泌尿器科的血尿か、ある程度わかる場合があります。ときには早朝尿と夕方の尿とを比較することが診断のヒントになります。
腎臓疾患の中には、今は軽い血尿で血液検査上正常でも(通常の血液検査で腎機能異常がみつかるのは、腎機能30-40%まで低下してから)、長期的(数年から二十年)には徐々に腎臓の働きが悪くなり、ついには血液透析!という場合もあります。早くから腎機能の保護を行うことが重要ですので、何年も血尿(尿潜血)が続いている方は一度専門医に診てもらいましょう。
無症候性血尿(何も自覚症状がない血尿)を生ずる疾患の70%は泌尿器科疾患、20-25%は内科疾患といわれています。また、加齢とともに悪性腫瘍(がん)の確立が増えてきますので、四十-五十歳以上の方は特に注意が必要です。
血尿の中には治療の必要がない、良性の血尿も多くありますが、「ほうっておいてもよい」という結論は、危険な血尿を除外して初めて言えることです。健康診断で血尿を指摘されたら、きちんと二次検診を受けましょう。
(2006年4月11日 産経新聞 無断転用禁止)